大切な家族の瞳を守ろう!
犬猫の目の病気と早期発見・治療の重要性
「うちの子、なんだか目がおかしいな…?」
愛するワンちゃん、ネコちゃんは言葉で「見えにくい」「痛い」と訴えることができません。
そのため、飼い主さんが目の異変に気づいた時には、すでに病気が進行しているケースが少なくありません。中には、手遅れになると失明につながる深刻な病気もあります。
だからこそ、日頃から彼らの目の様子をよく観察し、早期発見・早期治療に繋げることが非常に大切なのです。
こんな症状があったら要注意!見逃さないで、小さなサイン
目のトラブルは、毎日のちょっとした変化に表れます。以下のような症状が見られたら、あなたの愛犬・愛猫からのSOSかもしれません。迷わず動物病院にご相談ください。
眼脂(めやに)の量や色の変化
普段より増えた、黄色っぽい、緑色、血が混じっている、ネバネバしているなど
白目の充血
白目が赤く濁っている
目を細める・まぶしがる
光を嫌がる、片目をつぶる
目をかゆがる・前足でこする
頻繁に目をこすったり、家具に顔を擦り付けたりする
涙が多い・目の下が濡れている(流涙)
涙やけがひどくなる
角膜(黒目の表面)の濁り
黒目が白っぽく濁って見える、青白くなっている、傷ついているように見える
行動の変化
暗いところで物にぶつかる、段差を怖がる、呼ばれてもすぐに気づかないなど、視力低下が疑われる行動
これらのサインは、目の病気の初期症状である可能性があります。放置せずに、できるだけ早く専門家の診察を受けましょう。
知っておきたい!犬猫によく見られる目の病気とその原因
目の病気には非常に多くの種類があり、その原因も多岐にわたります。ここでは、特に犬猫でよく見られる代表的な目の病気についてご紹介します。
| 病名 | 主な原因 | 主な症状 |
|---|---|---|
結膜炎
|
ウイルス・細菌感染、アレルギー、異物など | 目やに、充血、かゆみ、涙が増える、目をしょぼしょぼさせる |
角膜潰瘍
|
外傷、逆さまつげ、ドライアイ、細菌感染など | 強い痛み、涙、角膜の白濁、目を細める、目やに、光をまぶしがる |
白内障
|
加齢、遺伝、糖尿病、外傷など | 黒目(瞳)の白濁、視力低下、物にぶつかる、段差を怖がる |
緑内障
|
眼圧の上昇(遺伝性、他の病気に続発) | 激しい痛み、目の充血、瞳孔散大、急激な視力低下、眼球突出、食欲不振 |
|
乾性角結膜炎 (ドライアイ)
|
涙の分泌不足、免疫疾患、感染症など | 目の乾燥、粘り気の強い目やに、角膜・結膜の炎症、角膜色素沈着 |
| 進行性網膜萎縮(PRA) | 遺伝 | 視力低下、夜盲症(暗いところが見えない)、最終的な失明 |
| 眼瞼内反・外反 | まぶたの形の異常(遺伝、老化) | 目への刺激(毛による)、涙やけ、結膜炎、角膜潰瘍 |
個別の病気を詳しく解説します。
結膜炎とは
結膜炎は、目の表面(白目の部分やまぶたの内側を覆う「結膜」)に炎症が起こる、犬猫に最もよく見られる目の病気の一つです。人間が「目が赤い」「目ヤニが多い」と感じるのと同様の症状が、犬猫にも現れます。
ウイルスや細菌感染、アレルギー、花粉、ハウスダスト、シャンプーなどの刺激物、逆さまつげ、異物混入など、原因は多岐にわたります。
主な症状
- 目が赤くなる(充血)
- 目ヤニが増える(白、黄、時に緑っぽい、ネバネバするなど多様)
- 涙が多くなる
- 目をしょぼしょぼさせる、かゆそうに前足でこする
- 目を開けにくそうにする
- まぶたが腫れる
角膜潰瘍とは
角膜潰瘍は、目の表面を覆っている透明な膜「角膜」が、何らかの原因で傷つき、深くえぐれるようにただれてしまう病気です。
簡単に言えば「目の表面のひどい傷」です。軽い傷(角膜びらん)であれば痛みや涙が出る程度で済むこともありますが、潰瘍にまで進行すると、角膜の奥まで傷が進み、失明や最悪の場合、眼球破裂につながることもあるため、早期の診断と治療が極めて重要です。
外傷(ぶつかった、目を擦った)、逆さまつげ、異物混入、ドライアイ、細菌感染などが主な原因となります。
主な症状
- 目を細める(強い痛みのサイン!)
- 涙が多くなる
- 白目が赤くなる(充血)
- 目ヤニが増える(とくに粘っこい目ヤニが多い)
- 目をこすろうとする
- 黒目が白く濁って見える
- 光をまぶしがる
※痛みが強いため、食欲不振や元気がなくなることもあります。
白内障とは
白内障は、目の中にある「水晶体(すいしょうたい)」という透明なレンズが白く濁ってしまう病気です。
水晶体はカメラのレンズのような役割をしており、通常は透明で光を網膜に届けています。しかし、これが白く濁ると光がうまく通らなくなり、結果として視力が落ちてしまいます。
最も一般的な原因は加齢ですが、遺伝、糖尿病、目の外傷、炎症などが原因となることもあります。
主な症状
- 黒目(瞳)の中心が白く見える
- 壁や物にぶつかるようになった
- 段差を怖がる・よくつまずく
- 目が見えにくそうな様子で不安そうにしている
- 光に対する反応が鈍い、または異常にまぶしがる
特に、室内や暗い場所での動きがぎこちなくなった場合は要注意です。
緑内障とは
緑内障は、眼圧(がんあつ:目の中の圧力) が異常に高くなり、目の奥にある視神経を傷つけてしまう非常に重い病気です。
進行すると視力が失われ、最終的には失明してしまう可能性があります。目の中には「房水(ぼうすい)」という液体が常に作られ、排出されています。
この房水の生産と排出のバランスが崩れ、うまく流れなくなると、目の中の圧力=眼圧が高まり、視神経や網膜に回復不可能なダメージを与えてしまうのです。
特に急性緑内障は、短時間で失明に至る可能性のある緊急疾患です。
緑内障は急激に進行する「急性緑内障」と、ゆっくりと進行する「慢性緑内障」があり、それぞれ症状が異なります。
急性緑内障の主な症状
- 目が赤くなる(充血)
- 激しい痛みを伴う:目を痛がる、触られるのを嫌がる、頭を振る、顔をこすりつける
- 涙が多い、まぶしがる
- 黒目が白っぽく濁る(水色のようにも見える)
- 瞳孔が開きっぱなしになる(光に反応しない)
- 食欲や元気がなくなる、嘔吐する
放置すると24〜72時間以内に視力が失われることもあります!一刻を争うため、すぐに受診してください。
慢性緑内障の主な症状
- 片目の視力低下に気づかれにくい(代償行動で気づきにくい)
- 瞳孔が開き気味
- 目が大きく見える(眼球突出)
- 徐々に視力が失われていく
正確な診断のために!目の検査でわかること
愛犬・愛猫の目の状態を詳しく調べるために、獣医師は以下のような専門的な検査を行います。これらの検査を通じて、病気の原因や進行度合いを正確に把握し、適切な治療計画を立てます。
視診・スリットランプ検査
目の表面(角膜、結膜)や、目の内部構造(水晶体、虹彩など)を拡大して詳しく観察します。小さな傷や異物も見つけ出すことができます。
眼圧測定
目の圧力を測定します。緑内障の診断には欠かせない検査です。痛みの少ない機器で迅速に行えます。
涙液分泌検査(シルマーテスト)
涙の分泌量を測定し、ドライアイ(乾性角結膜炎)の診断に用います。専用の細い試験紙をまぶたに挟んで測定します。
フルオレセイン染色検査
角膜に傷があるかどうかをチェックする検査です。特殊な染色液を目に点眼し、傷があれば緑色に染まって見えます。
眼底検査
目の奥にある網膜や視神経の異常を調べます。視力低下の原因を探る上で重要な検査です。
超音波検査
白内障で目の内部が見えにくい場合や、眼球内の腫瘍、網膜剥離などを確認するために行われます。
治療と継続的なケアで視力を守る
目の病気の種類や進行具合に応じて、内科的治療、外科的治療、そして継続的なケアを組み合わせて行います。
1内科的治療(点眼・内服など)
抗生物質や抗炎症薬の目薬
細菌感染や炎症を抑えます。
眼圧を下げる点眼薬
緑内障の治療の中心となります。複数の種類を組み合わせて使うこともあります。
涙を補う人工涙液
目の乾燥を防ぎ、不快感を軽減します。
炎症を抑える飲み薬
全身性の炎症や、目以外の症状がある場合に処方されることがあります。
点滴治療
緑内障で眼圧が急激に上がった場合など、緊急時に点滴で眼圧を下げることがあります。
2外科的治療
白内障手術
白く濁った水晶体を取り除き、人工レンズを挿入することで視力の回復を目指します。
角膜保護処置
重度の角膜潰瘍の場合、瞬膜を一時的に縫い合わせたり、結膜弁を移植したりして角膜の治癒を助けます。
眼瞼形成術
まぶたの形が異常な眼瞼内反(逆さまつげ)や外反を改善し、目への刺激を取り除きます。
眼球摘出
緑内障の末期などで激しい痛みがコントロールできない場合や、腫瘍などにより眼球を温存できない場合の最終手段です。痛みから解放し、QOL(生活の質)を向上させることが目的です。
3継続的ケア
ドライアイや緑内障などの慢性疾患は、一度発症すると一生の管理が必要となることが多いです。
定期的な通院と、指示された点眼薬や内服薬の継続が、病気の進行を抑え、愛犬・愛猫の快適な生活を保つために不可欠です。諦めずに、根気強くケアを続けていきましょう。
大切な目の健康を守るために、私たちにできること
いつもと違う目の様子に気づいたら、すぐに受診を!
「これくらいなら大丈夫かな?」と自己判断せず、少しでも気になる症状があれば、すぐに動物病院を受診してください。
早期の発見と治療が、目の健康を守る鍵となります。
病気の早期発見には定期的な眼科検診が有効
特に
- シニア犬猫
- パグ
- 柴犬
- チワワ
- アメリカン・コッカースパニエル
- シーズー
- フレンチブルドッグ
- ゴールデンレトリバー
- トイプードル
- ビーグル
など、遺伝的に目の病気が多いとされる犬種は要注意です。症状がなくても、年に一度の健康診断の際に目のチェックもお願いしましょう。
自宅でのケアと観察も重要
日頃から愛犬・愛猫の目をよく観察し、清潔に保つことも大切です。散歩から帰った後や、被毛が目に入りやすい犬種は、目の周りを優しく拭いてあげるなど、日常的なケアを心がけましょう。
最後に
目の病気は、放っておくとあっという間に進行し、取り返しのつかない事態になることも少なくありません。
「ちょっとおかしいかな?」その小さな気づきが、大切なご家族の「見る力」を守る第一歩です。
何か気になることがあれば、どうぞ遠慮なく当院にご相談ください。大切なワンちゃんネコちゃんの健やかな「見る力」を維持できるよう、私たちが全力でサポートいたします。

