免疫介在性溶血性貧血(IHA)と免疫介在性血小板減少症(ITP)

背景

免疫系の異常により赤血球が壊され、貧血が起こる病気です。赤血球を作るスピードよりも、壊すスピードの方が速いので貧血になってしまいます。原因は不明です。
免疫介在性溶血性貧血(IHA)と免疫介在性血小板減少症(ITP)はともに成熟赤血球や成熟血小板に抗体や補体が感作して血管内や血管外で破壊される病態であり、免疫学的破壊の標的が赤血球か血小板かの違いだけです。したがって治療はどちらの疾患もほぼ同じ治療法です。

症状

突発的に起こることが多く、貧血のために動物は元気がなくなりぐったりします。貧血からの粘膜蒼白(歯ぐき、舌の色が白くなる)他、脾臓の腫大、発熱、血色素尿(赤い尿)、不整脈が時に見られます。体の外への出血ではないため低蛋白血症などは起こりません。

診断

主に血液検査で傷つけられた赤血球を顕微鏡で確認することで行います。治療は免疫系を抑えて、それ以上の赤血球破壊をくい止めることが中心となります。ステロイド剤や免疫抑制剤を使用し、食欲が無くぐったりしているときには入院・点滴となります。一旦赤血球数が減ると、造血系がフル稼働してもまた赤血球数が回復し始めるまで最低5日はかかりますので、治療を始めても効果が現れるまでは時間がかかります。時に輸血が必要となります。予後は原因にもよりますが、一旦貧血から回復すれば順調なことが多いですが再発の予測は困難です。

症例

パピヨン、5歳、避妊雌、3.95kg
元気がないとの主訴で来院。可視粘膜蒼白、皮膚に内出血(全身性)あり。
血液検査にて、Ht15.28%、RBC 201万/L、PLT 1000、TP 3.8g/dl、ALB 1.1g/dl、TBIL <0.1mg/dl 血液塗抹上にて球状赤血球(++)、PLT数減少

処置

輸血85ml実施。次いでガンマガード(ヒト免疫グロブリン)1g/kg、コハク酸プレドニゾロンNa 2mg/kg、BID、IVおよびアザチオプリンの経口投与の開始。
翌日HT28%、可視粘膜色ピンク、皮膚の内出血の拡大なし、元気が出てきた。
状態は安定していたが、第3病日の血液塗抹検査にて球状赤血球が多数確認できることと、PLT数の上昇が弱いため、コハク酸プレドニゾロンNaを4mg/kg、BIDまで増量。
その後、HT、PLTの経過観察をしながら、ステロイドを漸減していった。通常、3~6カ月後を休薬の目標としている。
本症例は、1.5カ月を経過し、良好に維持できている。

ご紹介した症例は当院における臨床症例の一部であり、全ての症例に適用されるものではありません。
また、記事の内容は掲載時のものであり、現状と異なる場合があります。あらかじめご了承下さい。